マイクロ波加熱の応用例

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(5) 耐火物の乾燥

製鉄所で利用される取鍋(溶鋼を入れる鍋。直径5m*深さ5m程度)に内貼りされた耐火物の乾燥にマイクロ波と熱風を併用して乾燥している。取鍋に入る熔鋼の重量は百〜数百トンと非常に大きく、使われる耐火材は10〜30トン程度である。この耐火物(キャスタブル)の含水率は約6%で、この水分を短時間で乾燥するのが目的である。

この乾燥システムの概略構造を図19.3.31に示しているが、取鍋自身をオーブンの壁・底面と見做し、発振機や熱風発生装置を設けた蓋を取鍋に被せるという考え方である。即ち、加熱処理する段階でマイクロ波発振機や熱風発生装置などが搭載された大きな架台が鍋の上方に移動してきて降下し取鍋に蓋をする。その段階で加熱パターンに沿った加熱・乾燥を実施、乾燥後、取鍋から蓋を外すよう架台を移動する構造となっている。
マイクロ波発振機としては、発振周波数2450MHzで、発振管はマグネトロンやクライストロンを利用した出力が数十kW〜百数十kWのものと、電力半減深度の大きな915MHzのマグネトロンを利用した前記と同程度の出力のものが使用されている。

図19.3.31 製鋼鍋耐火材乾燥システム
図19.3.31 製鋼鍋耐火材乾燥システム

本装置は乾燥対象物が前記のように10〜30トンオーダ(水分:0.6〜1.8トン)と非常に大形であるため、1〜2日間かけて、熱風を併用しながら連続運転で乾燥処理を行っている。

本処理上の留意事項は、耐火物の乾燥度合に応じてPD値(耐火材単位重量当りの投入マイクロ波電力量;kW/t)を制御することである。必要以上に大きなPD値で処理すると耐火物にクラックが入ったり、極端な場合は耐火物内部に閉じ込められた水蒸気で耐火材が爆裂(一種の水蒸気爆発)、機器を破損させるなどの不具合が発生する。これを避けるため適切なPD値の乾燥パターン設定が可能なシステムとなっている。

補足説明:取鍋内の耐火材施工方法
取鍋内の耐火材は、昔は耐火レンガを積み上げ施工していたが、現在では図19.3.32のように取鍋に中枠をセット、含水率約6%のアルミナ磁器(Al2O3)を主成分とした不定形耐火材を流し込む方法と省力化が進んでいる。

図19.3.32 製鋼鍋耐火材施工方法
図19.3.32 製鋼鍋耐火材施工方法

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