マイクロ波加熱の応用例

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(4) 冷凍畜肉・魚肉の解凍処理

段ボール箱などに梱包されている氷点下数十℃の冷凍畜肉や魚肉を、−5〜−1℃(最大氷結晶生成温度帯)程度まで解凍する場合にマイクロ波加熱を利用している。従来の解凍方法である自然放置や流水解凍などに比較して数十分の一の処理時間(十数分〜30分程度)で解凍可能であり、ドリップ量も少ない結果を得ている。尚、被解凍物が大きいサイズの場合には、電力半減深度の大きい周波数915MHzを、小さいものは2450MHzのマイクロ波を利用している。

但し、マイクロ波加熱による冷凍畜肉の解凍処理は、その形状、肉・脂肪・骨など組成のアンバランスから(それぞれ損失係数が異なる)、加熱ムラにより先に融ける部分が発生する。先に融けた部分の損失係数は凍結部より大きいため、よりマイクロ波エネルギーを吸収し過熱してしまう、所謂「ランナウェイ加熱」現象による局部過熱が発生することが一般的で大きな課題として残る。

本過熱現象の回避策として、マイクロ波を間欠的に照射したり、PD値(被解凍物単位重量当たりのマイクロ波投入量:kW/kg)を制御したり、過熱部を冷風で冷やすなどの方法がある。しかしながら、これらの処置を施しても過熱現象は完全には無くならない。
近年話題となっているのが、圧力10〜100Pa程度(0.1〜1Torr程度)の減圧条件を作り出し、過熱部をその真空度の昇華熱で冷却しながら解凍する、図19.3.18に示すような業務用減圧式マイクロ波解凍装置(出力2kW、周波数2450MHz)が実用化されている。図19.3.19の右下方はターンテーブルに「柵状まぐろ」を並べた状況を示したものである。
この装置を利用すれば、短時間に、冷凍畜肉・魚肉などを局部過熱(ランナウェイ加熱)によるドリップの発生を大幅に抑え(1%以下)、更に生煮えのようなことも発生せず、ほぼ均一に解凍すること(最大氷結晶生成温度帯:−4〜−2℃程度)が可能である。

図19.3.19 業務用真空式マイクロ波解凍装置
図19.3.19 業務用真空式マイクロ波解凍装置

尚、真空度10〜100Pa付近では、マイクロ波エネルギーによる真空放電(グロー放電)が発生し易い領域であり、この現象を放置するとオーブンや導波管、マグネトロンを傷めることになる。本装置では、逆にこの現象をUVセンサーで検出しマイクロ波出力を「ON−OFF」制御しているのも特徴の一つである。

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