マイクロ波発生装置

前のページへ戻る このカテゴリーのトップへ 次のページへ進む

9.マイクロ波発生装置

マイクロ波エネルギーを得る手段としてはマグネトロン、クライストロン、ジャイロトロン、進行波管 などの電子管を利用した発振機、水晶振動子の固有振動を増幅するソリッドステート式発振機などがある。 特に一般的なものはマグネトロンを利用したもので、周波数2450MHz、発振出力で数百W〜6kW (発振出力が10kW〜30kW程度のマグネトロンもあるが、実用加熱装置への利用は無いと思える)、 915MHzでは100kW程度までのマイクロ波発振機が使用されている。
クライストロンの場合は、周波数2450MHz、発振出力120kW程度までのマイクロ波発振機が 稼動台数は少ないが我が国で利用されている。ソリッドステート式マイクロ波発振機については、周波数 2450MHz、発振出力で数百Wまでのものが実用化されている。
尚、周波数9GHzの進行波管評価用発振機を用いて加熱実験を行ったことがあるが、電力半減深度が 浅くて食品など被加熱物の表層しか加熱できず、マイクロ波加熱には適さなかったことを経験している。 更に周波数28GHzのジャイロトロンを利用した発振機もあるらしいが、この帯域での電力半減深度を 考慮すると「有用…?」と疑問が残る。いずれにしてもマグネトロン式マイクロ波発振機を除き、何れの 発振機も非常に高価であり、一般的な加熱分野での利用は難しいところである。
ここでは最も一般的なマグネトロン式マイクロ波発振機を詳述し、クライストロン式発振機とソリッド ステート式発振機については、その概要を説明する。

9.1 マグネトロン式マイクロ波発振機

9.1.1 概要

一般的にはマイクロ波発生源として既に説明した「CW(連続波)マグネトロン」が使用されている。
マイクロ波発振機の基本構成は、マグネトロンのカソード(陰極。通常はフィラメントが該当する)とアノード(陽極)間に印加する高電圧を発生させる高電圧直流電源(Eb;陽極電圧)、電子を放出させるためのフィラメントを規定温度に加熱する電源(Ef;フィラメント電圧)、電磁石を利用する場合はその励磁電源(Imag;励磁電流)、それらの制御回路及びマグネトロンを取り付けてマイクロ波エネルギーを 取り出すための高周波結合器(一種の導波管のようなもの)、それらを収容する筐体などから成っている。
更に、マグネトロン自身かなり発熱するので、それを除去する冷却が必要であり、発振出力1.5kWクラスの小電力用マグネトロンは強制空冷式を、発振出力3kWクラス以上の大電力用マグネトロンには水冷及び強制空冷式の併用、大形トランスなどは空冷式を利用している。
図9.1.1 に空冷式及び水冷式マイクロ波発振機例の外観を示しており、以下その特徴の概要を記する。


空冷式マイクロ波発振機
(周波数 2450MHz,発振出力 1.5kW)
(高電圧電源;インバータ式)
 
水冷式マイクロ波発振機
(周波数 2450MHz,発振出力 6kW)
(高電圧電源;インバータ式)
 
水冷式マイクロ波発振機
(周波数 915MHz,発振出力 100kW)
(高電圧電源;大形トランス式)
図9.1.1 マイクロ波発振機の外観

マグネトロンの動作状況を決める陽極電圧(Eb)発生電源は、従来は大形トランスを利用したものが 殆どであったが、最近は電子レンジでは当たり前のインバータ電源を利用したマイクロ波発振機も製品化 され、高効率・小形・軽量化が図られている。これにより電源部と発振部とがコンパクトに分離可能となり、 その結果、発振部がオーブン近傍に設置可能なため使用導波管数が大幅に削減できることになる。
図9.1.1 に示す周波数2450MHz、発振出力6kWと1.5kWクラスのマイクロ波発振機は両方 ともインバータ電源を利用しており、特に6kW発振機の重量は従来の大形トランスを利用した発振機に 比べ「1/3以下」へと大幅に軽量化されている。更に、単位発振出力当りの発振機価格(円/kW)が 従来製品よりもかなり安価となっており、前述の使用導波管数量の大幅削減と相伴って、高価と云われて いるマイクロ波加熱装置の価格低減に劇的とは云えないまでも寄与している。
発振出力1.5kWクラスのインバータ電源利用マイクロ波発振機も軽量化が図られ、単位出力当りの 価格も従来形発振機に比べて同等以下と安価となっており、これも一般的な加熱装置に利用されつつある。 尚、インバータ電源利用のマイクロ波発振機の場合、陽極電流(Ib)波形を低リップル化することが 容易であり、任意の発振出力高精度設定及び発振出力安定化機能を有した低リップル発振機もある。但し、 低リップル発振機は価格が高くなるため半導体・液晶分野などのプラズマ処理用として多用されているが、 一般的な加熱分野での利用は躊躇されてきた。しかしながら、最近では化学反応促進などの特殊分野での 利用も検討されており、一部では利用されているようである。
周波数915MHzのマイクロ波発振機は、マグネトロンの発振効率が2450MHzのものに比べて 「15〜20%」程度高いため、マイクロ波発振機としての総合効率も2450MHzのものに比較して 「15%」以上高くなる。従って、単位発振出力当りに必要な電源入力容量・冷却水量共少なくなるので、 省エネルギーで温室効果ガスである二酸化炭素(CO2 )の排出量を削減する発振機と云える。陽極電圧 発生電源はインバータを利用したものもあるが高価でもあり、大形トランスを利用した廉価なものの方が 多用されている。単位発振出力当り装置価格(円/kW)は、発振出力が50kW以上の発振機であれば 周波数2450MHzの発振機よりも安価となり、100kWクラス発振機では半額程度になっている。
即ち、マグネトロンを含め発振出力の違いほどには発振機の価格に違いが発生しないため、このような ことになると云えるのだが、事実発振出力30kWのマイクロ波発振機と100kWのそれとの価格差は 「40〜50%」程度と意外に小さいものとなっている。
尚、周波数915MHzのマイクロ波発振機を利用する場合は、従来は輸入品に頼らざるを得ない面も あったが、最近は国産化しようというメーカがあるとも聞いており、是非実現して欲しいとの思いである。 特に発振周波数2450MHzよりも電力半減深度が深いことから、前述の化学反応促進などシステムの 大形化には欠かせないのではと思っている。
表9.1.1 に各マイクロ波発振機の概略定格・仕様を示している。尚、アイソレータの「内蔵・外付け」は、 前者はアイソレータを発振機の筐体内に組み込んだもので、後者は組み込まれていないことを示している。 価格調査などを行なう場合、アイソレータを含む…? 含まない…?を明確にして比較する必要がある。

発振出力 1.5kW 5kW 6kW 100kW
発振出力は、何れも最大発振出力の10〜20%程度までは連続可変可能である。
発振周波数 2450±30MHz 915±13MHz
マグネトロン形名 H3181 2M68 H3881 NML915-100
電源入力 AC200V、50/60Hz AC400V,50/60Hz
三相、2.6kVA 三相、9.4kVA 三相、9.6kVA 三相、130kVA
総合効率 62% 53% 62% 77%
高圧電源方式 インバータ方式 大形トランス方式 インバータ方式 大形トランス方式
冷却方式
(必要流量)
強制空冷
(不要)
水冷・強制空冷併用
(6L/分)
水冷・強制空冷併用
(5L/分)
水冷・強制空冷併用
(40L/分)
重量 35kg 290kg 電源部;25kg
発振部;60kg
1300kg
寸法(W*D*H)
(mm)
450*530*250 500*700*1400 電源部;200*380*250
発振部;480*700*350
1460*1240*1930
アイソレータ 外付け 内蔵 外付け 内蔵

*表中の各数値は発振出力相当・マイクロ波発振機の代表的な数値例を示すものである。実際に利用を検討する 場合は、メーカ発行仕様書などにより確認していただきたい。

*発振周波数915MHz・マイクロ波発振機の発振出力は「30kW,60kW,75kW」などもある。

表9.1.1各種マイクロ波発振機の主な仕様

(以上9.,9.1,9.1.1;2010-01更新)

前のページへ戻る このカテゴリーのトップへ 次のページへ進む