マイクロ波加熱

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6.6.1 電子レンジ
工業用マイクロ波加熱装置の歴史は比較的浅い。同じ誘電加熱である高周波誘電加熱装置(周波数 13.56MHzなど)は、戦前から販売されており歴史も古く、その分市場もマイクロ波加熱装置よりも大きく、両者の生産出力(kW)の割合は「85%強:15%弱」程度である。
工業用マイクロ波加熱装置が製品化され市場に出されたのは業務用の電子レンジが売り出されてから遅れること数年と、家庭用電子レンジが売り出された頃とほぼ同じ昭和40年前半からである。
工業用マイクロ波加熱装置の製品化を開始したキッカケは、当時電子レンジに利用していた1kW前後のマグネトロンをより発展させ周波数2450MHz、出力4kW程度のマグネトロン[形式;2M60A。図6.6.2 (a)参照]が昭和41年(1966年)に、更に昭和44年には周波数915MHz、出力25kWのマグネトロン〔形式;1M70A。図6.6.2 (b)参照]が開発され、これらのマグネトロンの利用・販売の促進を図ることを目的として、昭和42年(1967年)に発振周波数2450MHz、発振出力12〜20kWの「畳殺虫用マイクロ波加熱装置(ダニ殺し装置)」が開発され市場に出されている。

図6.6.2 マグネトロンの外観
図6.6.2 マグネトロンの外観

図6.6.3 (a)はこの装置の外観を示しているが、ローラコンベヤ式で畳を連続的に搬送しながら加熱処理するもので、当時としては画期的なものであった。

図6.6.2 (a)及び(b)のマグネトロンの外観は、マグネトロンの大きさにほぼ比例したものになっている。915MHzのマグネトロンの方が、その波長の違い分大きく、発振出力も前者は4kW(2450MHz)、後者は25kW(915MHz)となっている。

尚、図6.6.3 (b) は現在のコンベヤ形マイクロ波加熱装置(発振出力27kW、周波数2450MHz)であり、マイクロ波発振機は発振出力1.5kWで空冷式のものを18台照射部上に収容しており、昔のものよりスッキリと纏まっていることが分る。

(a) 畳殺虫用加熱装置(20kW、2450MHz、水冷式)
(a) 畳殺虫用加熱装置
(20kW、2450MHz、水冷式)
食品加熱・殺菌用加熱装置(27kW、2450MHz、空冷式)
(b) 食品加熱・殺菌用加熱装置
(27kW、2450MHz、空冷式)
図6.6.3 新・旧コンベヤ形マイクロ波加熱装置の外観

その後、昭和52年(1977年)には即席食品の具などを膨化させることを目的とした発振出力50kW、周波数2450MHz、真空容器φ1000*長さ8000mm程度の本格的な減圧式マイクロ波加熱装置が開発されている。それまでの小さな容積100?前後の真空容器にマイクロ波エネルギーを供給する実験装置レベルであったものを、工業用として実際の食品の製造ラインに導入された始めての減圧式加熱装置と言える。本装置は、真空処理室の前・後に予備室を設置して、被処理物が入ったポリプロピレン製番重を間欠的に搬送しながら半連続処理可能な、本格的な生産装置でもある。

以来、食品分野、木材、窯業(陶磁器などの練り成型品、耐火物、ハニカムなどのセラミックなど)、化学(染料の減圧乾燥、ゴムの加硫など)、鋳物(乾燥、接着など)、印刷、医療、原子力などの各分野で、発振出力;数kW〜200kW程度の各種の装置が開発され幅広く利用されている。マイクロ波照射部の形状では箱形(バッチ式、コンベヤ式、減圧・真空式、加圧式など)、導波管式などが順次開発され、被加熱物の搬送方式もコンベヤ式、チェーンコンベヤ式、スチールコンベヤ式、ターンテーブル式、観覧車式、スクリュー式パイプ内部圧送式など加熱処理目的に対応したものが開発され現在に到っている。更に、発振機にインバータ方式も取り入れられ、発振管としてクライストロンを利用した発振機も開発、生産現場に採り入れられている。

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