マイクロ波加熱

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絶縁物に高周波電界を印加すると、絶縁物中のイオンや電子のような正・負の電荷が相対的に微小変位し電気的双極子が生じる。本現象が誘電分極であり、荷電粒子が電界の作用により移動するため生じるもので、Maxwellの電磁方程式における電気変位がこれにあたる。電気変位Dは電界Eに比例することから、

D=ε・E ・・・・・ (6.1.1)

で表される。この比例定数εが誘電率である。誘電体に寄与するこれら4種類の分極は周波数帯域によって異なり、これらの分極が生じる荷電体の移動が電界の時間的変化に追従出来なくなると、変位電流が電界に対し遅れを生じて電力損失が発生する。この遅れが生じる周波数を固有周波数と言い前頁の表6.1.1 に示す分極の種類によって異なり、ある特定の固有周波数の付近において遺伝子の破壊、化学作用、加熱作用などが発生する。以下、電子分極、イオン分極、配向分極の作用について説明する。

@ 電子分極、イオン分極

電子分極やイオン分極の場合は、物質は多数の調和振動子から成っていて、これを外力により振動させる場合を考えれば良い。それぞれの振動子は、例えば、正・負のイオン間の吸引力に打ち勝つ外力により振動させるので抵抗成分(減衰項)をもった調和振動を行う。外力と同相の振動の振幅は誘電分極の大きさを示し、振動子はある周波数で共振し、外力のエネルギ−を吸収する。吸収したエネルギ−は最後に紫外線であれば化学作用(電子分極)に赤外線であれば熱エネルギ−に変わり(イオン分極)、物質に作用することになる。この状態を図6.1.1 (a) に示している。

A 配向分極

配向分極の場合は、粘性流体の上に永久双極子が浮いている状態のモデルを考える。電界が印加されるとバラバラに向いていた永久双極子が整列する。これは質量を持った双極子に電界という力が加わって動いたことになり、電界エネルギ−が双極子の整列状態のエネルギ−に変換されたことになる。電界を除去すると粘性流体上の双極子は、再びバラバラの向きになる。そして整列状態のエネルギ−は熱エネルギ−となって誘電体の温度を高めることになり、所謂物質を加熱することになる。この場合、電界の変化に対し双極子の整列状態の変化には時間的遅れが発生する。周波数が低い時には、この遅れは無視できて、双極子の動きは電界の動きに十分追従可能であり、何の変化も生じない。しかしながら、周波数が高くなるにつれ双極子の動きの遅れが目立つようになり、更に周波数が高くなり最後には固有周波数以上の周波数では全く動かなくなる(追従出来なくなる)。このような現象を伴う誘電分極の大きさとエネルギ−吸収の変化を示したものが図6.1.1 (b) である。

図6.1.1 分極と吸収の周波数による変化
図6.1.1 分極と吸収の周波数による変化
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