誘導加熱

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5.4 各種材料の浸透深さδ

表5.4.1 に、周波数2450MHzにおける各種材料の浸透深さδを示している。本表より導電率が大きい(抵抗率が小さい)銀・銅・金・アルミニウムなどの浸透深さは浅くて、ステンレス・チタンのような導電率が小さい(抵抗率が大きい)ほど深いことが分る。発熱状況は前者が損失・発熱共少なく、後者は損失・発熱共大きくなる。以上の材質は非磁性体で比透磁率μSが「1」程度であり、ジュール加熱(抵抗加熱)での損失・発熱のみで、ヒステリシス損失による発熱は殆ど無いことになる。
一方、磁性体であるニッケル・軟鉄・鋼鉄は、比透磁率μSが大きいため極端に浸透深さは浅くなり、ヒステリシス損失も加わり発熱がより大きくなると云える。
尚、表5.4.1の計算結果は、導電率・比透磁率などの数値が調査した資料により微妙に異なっており、概略オーダがこの程度と理解していただきたい。

材質 導電率δ
*107
(S/m)
抵抗率
*10-8
(Ω・m)
比透磁率
μs
μ/μo
浸透深さ
δ
(μm)
材質 導電率δ
*107
(S/m)
抵抗率
*10-8
(Ω・m)
比透磁率
μs
μ/μo
浸透深さ
δ
(μm)
6.17 1.62 0.99998 1.30 ニッケル 1.38 7.24 600 0.11
5.81 1.72 0.99999 1.33 軟鉄 1.02 9.80 2000 0.07
4.66 2.15 1.00000 1.49 鋼鉄 0.67 15.0 5000 0.06
アルミニウム 3.63 2.75 1.00002 1.69 SUS304 0.14 71.4 1 8.60
黄銅 2.56 3.91 1 2.01 チタン 0.18 55.0 1 7.58
*真空の透磁率μo=4*π*10-7(H/m)。
*比透磁率のデータは引用文献により表示桁数が異なっている。比透磁率1.02以上で磁石に吸着する由。
表5.4.1 各種材料の導電率δ、比透磁率μSと浸透深さδの関係


ここでマイクロ波加熱処理中に被加熱物の温度を測定する際の一手法を説明する。温度測定には金属保護管(シース)熱電対を利用するのが一般的で、シース材としてSUSを利用した場合、マイクロ波エネルギーによる誘導加熱でシース自身が発熱してしまい被測定物の正しい温度を示さないことがある。この場合、外径φ3.2〜4.8mm程度のシース外周面に金メッキ処理を施し、誘導加熱による発熱を抑制することが考えられる。実際には熱電対部が埋まっているシース先端付近のみに、金の浸透深さの3倍以上の厚さ(5μm以上)の金メッキ処理を行なうことで誘導加熱の影響を抑制することが可能である。但し、誘導加熱の影響を完全に無くすることは困難と云える。
本温度測定方法を実施する場合の注意点は、マイクロ波オーブン壁に加工した穴にシース形熱電対を差し込む部位での電波漏洩で、オーブン壁とシース材外周とを十分短絡するか、λ/4チョークを利用するなどしてマイクロ波エネルギーの漏洩量が安全値以下になるよう工夫して実施していただきたい。
尚、電子レンジを含むマイクロ波加熱装置のオーブンをステンレス材を利用して製作する場合、電波漏洩のみを考慮した場合には、板厚50(μm)程度の金属の箱で問題無いことになる。しかしながら、これでは機械的強度が不十分であり使用に耐えない。更にプラスチックやダンボールを利用し箱を作り、厚さ50(μm)程度のステンレス板を隙間無く内張りすることにより、電波漏洩を抑えたマイクロ波オーブンとしては機能するとも云える。これらの電波漏洩絡みの方法は例え話で記述したものであって、機械的強度・マイクロ波面の安全性に問題があり、危険でもあるので実行しないでいただきたい。

(以上 5.4;2010-01更新)

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